サン=サーンス 交響曲第3番 ハ長調 作品78 「オルガン付き」

サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」雑食のぼくは気が向けばクラシックも聴く。

近頃は『のだめカンタービレ』のお陰で、割とクラシックも人気であるらしい。去る2006年はモーツァルト生誕250周年なんて話題もあり、CDショップの平台もやたらと賑やかだった。そんな流行とは無関係に、ぼくにはお気に入りの交響曲がある。

サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」である。

シャルル・カミーユ・サン=サーンス。不遇の人である。才人にありがちな頑迷さで、近代音楽に阿るのを嫌ったせいだ。時流に逆らって勝てる道理はない。ドビュッシーやなんかが正しく芸術している中、煌びやかな過去の遺物、ロマン主義を貫いた生粋の偏屈者である。

19世紀後半に活躍した天才サン=サーンスは、当代屈指のオルガニストでもあった。そんな彼が交響曲にオルガンを加える。劇的に響かぬはずがない。芸術が孤高を求めるというなら、確かにこれは芸術的ではないかもしれない。何しろ、とても解かりやすい。

けれども、それが何だというのか。

神童として名を馳せ、ピアノ、オルガン奏者としても図抜けていた彼が、最盛期に自らの創造力と知的センスを惜しみなく注ぎ込んで書き上げた作品である。独創的な構成、新しい技法、彼は何も保守的なばかりではなかったのである。

華麗なる管弦の音に精妙なピアノ、荘厳なオルガンの響きが、この上なくドラマティックに不可視の物語を奏でる。それは、当代の芸術に比していささかロマンティックに過ぎた。それを瑕だといい張るのは、それこそ同時代性に囚われた安直な批判なんじゃないだろうか。

第1楽章後半に現れる静のオルガンが、第2楽章後半、大音声で炸裂する。その劇場的な効果は、分かっていてもやっぱり感動的だ。コーダに向けて加速度的に音圧を増す圧倒的な展開。その衒いのないダイナミズムに身体が震える。これを生で聴いたりしたら落涙必至である。

この作品の定番音源はデュトワ指揮、モントリオール交響楽団のDECCA盤ということになっている。確かに素晴らしい。文句のつけようがない。けれども、もうひとつぼくが気に入っているのは、デュトワの師匠でもあるミュンシュ指揮、ボストン交響楽団演奏の録音だ。

1959年の録音とは思えない迫力と臨場感。何度も再発されているところを見ると、それなりに人気の録音なんだろう。ぼくが今よく聴いているのはBMGから出ているSACDハイブリッド盤だ。2004年にリマスタリングされたもので、SACDならオリジナルの3chで聴くことができる。

クラシックファンならずとも楽しめる1枚だと思う。

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