ラウル・ミドン“ステイト・オブ・マインド”

music051019.jpgまた、骨のあるミュージシャンがでてきた。

ラウル・ミドン(Raul Midón)“ステイト・オブ・マインド”

ラジオでそのタイトルトラックを耳にして以来ずっと気になっていた。そしてCDを買った。今は暇があれば聴いている。一曲一曲のクオリティは高いし、アルバムを通してのバランスも申し分ない。全編を彩る豊かなアコースティックサウンドと、巧みにコントロールされた声がしっくりと体に沁み込んでくる。

こういう人がまだでてくる。それだけで嬉しくなる。

7曲目'Expressions of Love'でスティービー・ワンダーがハーモニカソロを吹いている。これはなるべくしてなった組み合わせだろう。圧倒的才能に溢れる盲目のミュージシャン。それだけでもふたりを引き合わせる外的な力を働かせるには十分な要素だったはずだ。そしてこの共演は、ラウル・ミドンがスティービー・ワンダーの正嫡でありながら単なる亜流ではないことを示してもいる。

スティービー・ワンダーが示した音楽の大衆性はブラックミュージックに対する偏見を捨てさせるのに十分な役割を果たしてきたと思う。ブラックミュージックの延長線上にポップミュージックは成立する。けれども、当然のことながら彼の音楽は大衆性と同時に唯一無二のオリジナリティを持ってもいた。だからこそ後続のミュージシャンが簡単にその後に続くことはできない。

ラウル・ミドンが盲目の黒人ミュージシャンであることは、どうしてもスティービー・ワンダーを想起させる。これは決して有利な条件ではない。けれども、ミドンの独創性はその心配を杞憂に変えるだけの力を持っていた。本物でなければこうはいかない。その音楽性の豊かさはアルバムを通して聴けばすぐに分かる。

お手軽に使い捨てられる音楽ではない。

ソウルフルと聞いて身構える人、卓越したギター・テクと聞いて腰が引ける人。実にもったいない。そんなことは気にせず一度は聴いてみた方がいい。ポップなソングライティングに妙な気張りなんてないし、“ステイト・オブ・マインド”のイントロは技巧云々の前に恰好いい。

第一、本当に良質な音楽は、聴く人を選んだりはしないものだ。

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